建築現場仮囲いの中の面白人間模様 その3
エリートと落ちこぼれの話
4月以降になると、現場にもゼネコンの新卒者が入ってきます。
特に大手ゼネコンには、東大のほか国立大建築学科出のいわゆるエリート達もヘルメットを被り、現場で仕事に従事します。
中には大学院出もいます。
最初は施工の基本である、鉄筋の配筋や型枠大工 の施工状況を、図面片手にチェックして回りますが時として、彼等にアゴで使われることもあります。
「おい東大、そこのベニア一枚こっちに持ってきといてくれ!」
その後は、コンクリート打設に立ち合います。
そこでは、土工やポンプ屋、左官屋等口の荒い連中と一緒に作業に立ち会う訳で、もし生コン車等の手配ミスがあったりすると
「何やってんだよ! そのぐらいの計算もできねぇのか? ホントに大学出てンのか?! ボケ!」
等とエリートが中卒や高校中退の落ちこぼれの作業員に言われる始末です。
現場では何よりも経験が物を言う所なので、エリートもしばらくは我慢ですね。
現場は様々な人達の集合場所で、
例えば、元々ヤクザ上がりの父親が立ち上げた、鳶の会社を引き継いで今は堅気として経営し、二代目の本人も大学出のエリート鳶の職人として従事しているが、その会社の役員は、まだ背中に墨を入れている連中がいる。
学生時代は、バイク・車高短を乗り回し、検挙・退学経験者。
サラ金や借金を踏み倒し逃げ回っている者。
一流企業を退社してフリーターしている者。
日払いでその日暮らしをしている者。
家出中の者。
勿論、この仕事を天職としてプロ意識を持っている者。
このように東大出のエリートから、ならず者までが同じ作業場で、同じ目標に向かって一緒に仕事をしている等というのは、なかなか無いことだ思われます。
だから面白いんです。現場は・・・・!